眼精疲労の改善に運動は効果的?目と体の疲れをケアする方法

デスクワークの合間に画面から目を離して遠くを見る人

眼精疲労の改善では、運動を増やすよりも、画面を見続ける時間と同じ姿勢を続ける時間をこまめに中断することが対策の基本です。

目や首・肩を軽く動かすセルフケアもありますが、「眼球体操」と「目を休ませること」は分けて考えると、何から始めればよいかが分かりやすくなります。

今回は、2023年8月22日にしんかい眼科クリニックが公開した眼のストレッチや眼球体操を起点に、厚生労働省の情報機器作業ガイドライン、日本眼科医会、米国検眼協会(AOA)の情報と照らし合わせながら、眼精疲労の改善に運動をどう取り入れればよいのかを整理します。

ポイントは、すべての方法を同じ「おすすめ度」で考えないことです。公的ガイドラインで具体的に示されている作業管理と、医療機関がセルフケアの一例として紹介している体操を分けて見ていきましょう。

目次

眼精疲労の改善に運動は効果的?まず優先したいのは休憩

パソコン作業を中断して窓の外を見ながら目を休める人
※画像はAIによるイメージ

眼精疲労対策では、運動だけに頼るのではなく、画面作業を区切って目と体を休ませることを先に考えます。

日本眼科医会では、目を使い続けることによって、目の疲れや痛みだけでなく、首・肩のこりや頭痛などを伴うことがある状態として眼精疲労を説明しています。

つまり、眼精疲労は「目だけが疲れている状態」とは限りません。デスクワークをしている人なら、目の疲れと同時に首や肩が重い、頭までスッキリしないと感じることもあります。

原因も一つではありません。目の使いすぎのほか、眼鏡やコンタクトレンズが合っていないこと、目の位置に関する問題、ストレスなどが関係する場合があります。

そのため、「目が疲れるのは運動不足だから」と単純に考えるのは適切ではありません。

眼精疲労対策は「動かす」前に「使い続けない」

ここでまず参考にしたいのが、厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」です。

同ガイドラインでは、情報機器を使う作業について、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までに10~15分の作業休止時間を設けること、さらに一連続作業時間内に1~2回程度の小休止を設けることが示されています。

これは、個々の眼球体操の効果を示したものではありません。仕事そのものを長時間連続させないための、作業管理に関する公的な指針です。

この違いは大切です。

「眼精疲労には運動がよい」と聞くと、目を上下左右に動かしたり、首を回したりすることを最初に思い浮かべるかもしれません。

しかし、その前にできることがあります。そもそも目と体を長時間休ませずに使い続けないことです。

眼精疲労対策を考えるなら、まずは「疲れてから運動する」より「疲れやすい使い方を連続させない」。私は、この順番のほうが日常に落とし込みやすいと考えています。

眼精疲労のセルフケアとして紹介されている目の運動とは?

顔を動かさず目だけを上下左右に動かす眼球体操
※画像はAIによるイメージ

眼球体操や目のストレッチは、医療機関が紹介しているセルフケアの一例です。公的ガイドラインによる作業休止とは位置づけが異なります。

しんかい眼科クリニックは2023年8月22日の記事で、自宅で取り入れられる方法として「眼のストレッチ」「眼球体操」「3分のツボ刺激」を紹介しています。

眼のストレッチとして紹介されている主な方法は次のとおりです。

  • 左右の目を交互に数秒ずつウインクし、左右それぞれ10回
  • 両目を閉じてから開く
  • 顔を動かさず、目だけで上下・左右を見る
  • 上下左右へ回すように眼球を動かす

いずれも、特別な器具を用意しなくても取り入れられる方法です。

デスクワーク中に「目が重くなってきたな」と感じたとき、画面からいったん離れるきっかけとして考えると取り入れやすいでしょう。

眼球体操はたくさんやればよいわけではない

ここで、「10回なら20回のほうが効きそう」と回数を増やす必要はありません。

これは私なりの安全面を踏まえた考え方ですが、目の体操を筋力トレーニングのように限界まで行うものとは考えないほうがよいでしょう。

しんかい眼科クリニックでも、痛みや不調を感じた場合には中止し、医療機関へ相談するよう案内しています。

つまり、目的は回数を達成することではありません。

仕事中なら、メールや資料作成が一区切りしたところで画面から視線を外し、ゆっくりまばたきをする。その程度からでも始められます。

「目の運動をしなければ」と新しい宿題を増やすより、画面を見続けている状態を終わらせる合図として使う。私は、この取り入れ方なら続けやすいと感じます。

眼精疲労対策は、頑張るための健康習慣ではありません。毎日の負担を少し軽くするための小さな工夫として考えてみてください。

20-20-20ルールと眼球体操は何が違う?

20-20-20ルールは近距離の画面を見続けないための休憩法で、意識的に眼球を動かす体操とは目的が異なります。

しんかい眼科クリニックでは、親指を目印にしてピントを動かす眼球体操も紹介されています。

腕を伸ばして親指を立て、両目で親指を見ます。そこから親指を見ながら目を寄せ、ぼやけてきたら再びピントが合う位置まで戻す動きを5往復する方法です。

一方、デジタル機器を使うときの休憩法として知られているのが、米国検眼協会(AOA)が紹介する20-20-20ルールです。

20分ごとに20秒間、20フィート、つまり約6m先を見るという考え方です。

この二つを、「どちらも目の運動」とひとまとめにしないことがポイントです。

眼球体操は意識的に目を動かすセルフケアの一例。20-20-20ルールは、近くの画面を見続ける状態をいったん中断するための方法です。

眼精疲労対策の優先順位を整理してみよう

違いをシンプルに整理すると、次のようになります。

方法 主な考え方 日常での取り入れ方
作業休止 長時間の連続作業を避ける 作業そのものをいったん止める
20-20-20ルール 近くを見続けない 約6m先へ視線を移す
眼球体操 目を意識的に動かす 無理のない範囲で行う
姿勢を変える 同じ姿勢を続けない 立つ、歩く、肩を動かす

私なら優先順位は、まず画面から目を離す。そのうえで、無理がなければ目を動かすと考えます。

20分という数字を守ること自体が負担になるなら、オンライン会議が終わったとき、資料を1本作り終えたときなど、普段の仕事の区切りを休憩の合図にしてもよいでしょう。

時間だけで管理するより、「仕事の区切り」とセットにすると忘れにくくなります。

健康習慣は、完璧に守ろうとすると意外と疲れるものです。まずは「画面を見ない時間を作る」という目的を忘れないことが大切です。

首・肩の運動も必要?デスクワークでは体の固定も見直そう

デスクから立ち上がって肩をゆっくり回すオフィスワーカー
※画像はAIによるイメージ

目の疲れと首・肩のこりが重なっているなら、目だけでなく姿勢を変え、体を固定している時間も減らしてみましょう。

日本眼科医会では、長時間同じ姿勢でキーボード操作などを続けると、首や肩の筋肉が疲労し、腰にも負担がかかることが説明されています。

ですから、眼精疲労を感じるたびに目だけを動かすより、席を立つ、肩を軽く動かす、姿勢を変えるといった行動を組み合わせるほうが理にかなっています。

厚生労働省のガイドラインでも、座った状態だけに偏らず、時折立位を交えて作業することが望ましいとされています。

仕事中は「運動する時間」をわざわざ作らなくてもいい

難しいストレッチを覚える必要はありません。

  • 飲み物を取りに席を立つ
  • 数分歩く
  • 肩をゆっくり回す
  • 背もたれから体を起こして姿勢を変える
  • 画面から視線を外す

この程度でも、同じ姿勢を連続させないきっかけになります。

ここで大切なのは、運動を新しい予定として増やさなくてもよいということです。

例えば飲み物を取りに行けば、自然に立ち上がります。コピーやトイレへ行くときに少し歩けば、座り続ける時間も途切れます。

「運動のための5分」を作れなくても、「座り続けない数分」なら作れる。

この考え方は、忙しい人ほど取り入れやすいのではないでしょうか。

モニターとの距離も確認してみよう

さらに、画面との距離も確認しておきたいところです。

日本眼科医会では、パソコンを使用するときの例として、目とモニターの間を40~50cm程度とることなどを紹介しています。

休憩を増やしても、画面を見るたびに無理な姿勢になっていたり、顔を近づけなければ文字が読みにくかったりすれば、別の見直しも必要になってきます。

ここまで見ると、眼精疲労対策は「おすすめの目の運動を探すこと」だけではないと分かります。

休憩の取り方、姿勢、画面との距離、眼鏡などの見え方を含め、目を使う環境全体を見直すことが大切なのです。

目の周りのツボ刺激は眼精疲労にどう取り入れる?

目の周囲への刺激は、医療機関がセルフケアとして紹介している方法の一つですが、眼精疲労への効果が公的ガイドラインで確立された対策と同じ位置づけではありません。

しんかい眼科クリニックでは、「太陽」「攅竹(さんちく)」「睛明(せいめい)」「承泣(しょうきゅう)」「魚腰(ぎょよう)」「絲竹空(しちくくう)」といった目の周囲の部位を刺激する方法も紹介しています。

記事では、いくつかの部位を8~10回軽く刺激したり、睛明→攅竹→魚腰→絲竹空→承泣→太陽の順番で5秒ずつ押したりする方法が示されています。

ただ、ここで「ツボを押せば眼精疲労が改善する」とまで言い切るのは避けたいところです。

あくまで、しんかい眼科クリニックがセルフケアの一例として紹介している方法と捉えましょう。

また、眼球そのものを強く押すような刺激は避け、痛みや違和感があれば中止してください。

個人的には、疲れている目に何かを「追加する」前に、いったん目を閉じて画面を見ない時間を作るほうを先にしたいと考えています。

目が疲れたときほど、「何をすればいい?」と方法を探したくなります。

けれど、ときには何かをするのではなく、目を使うことをいったんやめる。これも立派なセルフケアです。

運動しても眼精疲労が続くのはなぜ?眼鏡や見え方も確認しよう

休憩やセルフケアをしても眼精疲労が続く場合は、運動以外の原因も考える必要があります。

日本眼科医会では、眼鏡やコンタクトレンズの度が合っていないことなども眼精疲労の原因として挙げています。

特に40代以降では、近くの見え方が変化する老視との関係も無視できません。自分の目に合っていない老眼鏡を使うことも、眼精疲労につながる場合があると説明されています。

ここは意外と見落としやすいポイントです。

ストレッチをしてもすぐ疲れてしまうと、「もっと体操を増やしたほうがいいのかな」と考えたくなります。

しかし、見え方そのものに無理があるなら、体操の種類を増やすより眼鏡やコンタクトレンズを含めた視環境を確認するほうが先かもしれません。

眼精疲労を運動不足だけの問題にしない

例えば、「パソコンを見ると疲れる」という一つの症状でも、考えられる背景は同じとは限りません。

長時間休憩していない人なら、まず作業時間の見直しが必要かもしれません。姿勢をほとんど変えていない人なら、体を固定する時間も気になります。

一方で、画面の文字が以前より読みにくい、顔を近づけることが増えたという人なら、見え方そのものを確認する視点も必要です。

「眼精疲労=この運動をすればいい」と一つの方法に決めないことが、遠回りを減らすポイントだと私は考えています。

次のような場合は、セルフケアだけで様子を見続けず、眼科で相談しましょう。

  • 休んでも目の疲れが残る
  • 目の痛みや強い不快感がある
  • かすみなど見え方の変化が続く
  • 眼鏡やコンタクトレンズが合っていないと感じる
  • 頭痛など、目以外の症状も続く
  • 目の体操をすると痛みや不調が強くなる

日本眼科医会では、十分に睡眠をとった翌朝になっても目の疲れが残るような場合には注意が必要とされています。

「運動が足りない」と決めつけず、原因を切り分けることも大切なセルフケアです。

眼精疲労では「運動を増やす」より「固定時間を減らす」

画面から目を離して遠くを見たあと席を立つデスクワーカー
※画像はAIによるイメージ

ここからは、厚生労働省、日本眼科医会、AOA、しんかい眼科クリニックの情報を見比べたうえでの私なりの考察です。

眼精疲労について調べると、「どの目の体操がいいのか」「何回やればいいのか」と、つい運動メニューの正解を探したくなります。

けれど、情報源の位置づけを分けて整理すると、優先順位が見えてきます。

厚生労働省のガイドラインで具体的に示されているのは、連続作業時間や作業休止、小休止、姿勢などの作業管理です。

一方、眼球体操やツボ刺激は、しんかい眼科クリニックが日常で行えるセルフケアの方法として紹介しているものです。

つまり、「体操をしなければ眼精疲労対策にならない」というわけではありません。

むしろ私が重要だと考えるのは、目や体を何分動かしたかではなく、目と体を何時間固定し続けたかという視点です。

眼精疲労対策を4つの行動に分ける

そこで、複数の情報を日常の行動に置き換えるなら、次の順番が分かりやすいと思います。

①画面から目を離す → ②遠くを見る・目を閉じる → ③立つなどして姿勢を変える → ④余裕があれば目や首・肩を無理なく動かす

これは厚生労働省などが示した公式の「4段階手順」ではなく、今回の資料を踏まえて私が整理した優先順位です。

この順番なら、眼精疲労対策を新しいトレーニングとして生活に追加しなくて済みます。

仕事が一区切りしたら、画面から離れる。遠くを見る。そのついでに立ち上がる。

まずは、それだけでも構いません。

「運動する」より「固定を解除する」と考える

今回の情報を整理していて、私は「眼精疲労と運動」を考えるときに、運動量ではなく固定時間を見るという考え方が実生活では役立つと感じました。

例えば1日中デスクワークをしている人に、「毎日もっと運動しましょう」と言っても、新しく運動時間を確保するのは簡単ではありません。

しかし、「1時間以上ずっと同じ作業を続けない」「仕事の区切りで視線を変える」「立ち上がる」と考えれば、普段の生活そのものを少し変えるだけで済みます。

目だけを固定しない。姿勢だけを固定しない。そして、作業時間も固定しない。

この3つを意識すると、「眼精疲労には何の体操が一番いいの?」という問いから、もう一歩広い視点で自分の生活を見られるようになります。

疲れた体をあとから動かすだけでなく、疲れやすい状態を長時間続けない。

眼精疲労対策では、この発想も覚えておきたいところです。

まず一つだけ始めるなら何をする?

いろいろ紹介すると、「結局、全部やらないといけないの?」と思ってしまいますよね。

全部を一度に始める必要はありません。

まず一つ選ぶなら、仕事が一区切りしたら画面から目を離すことから始めてみてはいかがでしょうか。

そのとき余裕があれば遠くを見る。さらに余裕があれば立つ。肩が固まっていると感じたら軽く動かす。

このように、一つの行動に少しずつ足していけば十分です。

「眼精疲労のために運動をしなければ」と頑張るより、疲れを生みやすい連続時間を小さく切ることから始めるほうが、忙しい毎日にはなじみやすいのではないでしょうか。

まとめ|眼精疲労の改善では休憩を土台に無理なく体を動かそう

眼精疲労のセルフケアとして、眼球を上下左右に動かすストレッチや親指を目印にした眼球体操、目の周囲への刺激などが医療機関から紹介されています。

ただし、これらのセルフケアと、厚生労働省が示す作業管理は同じ位置づけではありません。厚生労働省では、一連続作業時間を1時間以内とし、10~15分の作業休止や途中の小休止を設けることなどが示されています。

また、AOAが紹介する20-20-20ルールのように、近くの画面から視線を外すという考え方もあります。

眼精疲労対策でまず意識したいのは、目を動かすことより、目と体を固定し続けないことです。

目の運動、首や肩を動かすこと、立ち上がることは、画面作業を中断する行動と組み合わせて考えてみましょう。

そして、休んでも疲れが残る、目の痛みや見え方の変化が続く、眼鏡やコンタクトレンズが合わないと感じる場合は、体操だけで解決しようとせず眼科で相談してください。

まず今日は、作業が一区切りしたところで画面から目を離し、遠くを見ながら立ち上がる。

一つだけ試すなら、そこからで十分です。

よくある質問

眼精疲労の改善では、運動と休憩のどちらを優先すればいいですか?

まずは、画面を見続ける時間を中断することを優先して考えると分かりやすいでしょう。

厚生労働省では情報機器作業について連続作業時間や作業休止の目安を示しており、目の体操は医療機関が紹介するセルフケアの一例として位置づけるのが適切です。

運動をするかしないかだけで考えるのではなく、目と体を長時間固定しないことから見直してみましょう。

仕事中にすぐできる眼精疲労対策はありますか?

画面から視線を外し、遠くを見る方法なら取り入れやすいでしょう。

AOAが紹介する20-20-20ルールでは、20分ごとに20秒間、約6m先を見ることを目安としています。仕事の区切りに立ち上がれば、同じ姿勢も同時に中断できます。

20分ごとの管理が難しい場合は、会議や資料作成など普段の仕事の区切りを休憩の合図として利用する方法も考えられます。

眼球体操は何回くらいやればいいですか?

しんかい眼科クリニックでは、左右それぞれ10回のウインクや、親指を目印にした5往復の眼球体操などが紹介されています。

ただし、回数を増やせばよいというものではありません。痛みや不調があれば中止し、無理に続けないことが大切です。

眼精疲労には首や肩の運動もしたほうがいいですか?

首や肩のこりも感じている場合は、目だけでなく、同じ姿勢を続けている時間にも目を向けてみましょう。

席を立つ、少し歩く、肩をゆっくり動かすなど、難しい運動でなくても姿勢を変えるきっかけになります。

眼精疲労で眼科を受診したほうがいい目安は?

休んでも目の疲れが残る、痛みやかすみなどの見え方の変化が続く、眼鏡やコンタクトレンズが合っていないと感じる場合などは、眼科へ相談しましょう。

特に、十分に睡眠をとった翌朝にも疲れが残る場合は、「運動しているのに良くならない」と体操を増やすより、別の原因がないか確認することが大切です。

参考

  • しんかい眼科クリニック「眼のストレッチ・眼球体操・3分のツボ刺激」
  • 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
  • 日本眼科医会の眼精疲労に関する情報
  • 米国検眼協会(AOA)の20-20-20ルールに関する情報
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