[toc]
雨の日のだるさと吐き気には低気圧が関係することがありますが、天候だけが原因とは限らず、強い症状や普段と違う不調には注意が必要です。
気圧の変化に伴う内耳や自律神経への影響が一つの候補になる一方、片頭痛やめまいを伴う病気、胃腸の不調などでも吐き気は起こります。「雨の日だから」と決めつけず、症状の強さや続き方まで見ていきましょう。
雨の日にだるくて吐き気がするのはなぜ?

雨の日になると体が鉛のように重くなり、眠気や頭痛に加えて「なんとなく気持ち悪い」と感じる人もいます。
こうした天候の変化に伴う不調は、一般に「気象病」や「低気圧不調」などと呼ばれることがあります。
豊島医院が2023年6月27日に公開した解説では、低気圧による体調不良には、耳の奥にある「内耳」と自律神経が関係すると考えられています。
内耳は体のバランスを保つことに関係する器官です。気圧が変化した際、その情報が体内で処理される過程が自律神経にも影響し、不調につながる可能性が指摘されています。
ただし、「低気圧になると内耳が反応し、それだけで吐き気が起こる」という単純な仕組みが完全に確立しているわけではありません。
気圧、温度、湿度など複数の環境変化に加え、その日の睡眠、疲労、体調などが重なって症状が現れる可能性があります。
ここは、かなり大切なところです。
「雨の日に症状が出る」という相関があっても、それだけで低気圧が唯一の原因だとは断定できません。
天気は体調を整理する手がかりの一つ、と考えるくらいがちょうどよいでしょう。
だるさと吐き気が同時に出ることはある?
低気圧不調では、一つではなく複数の症状が重なる人がいます。
小林製薬が2019年10月に20~69歳の男女2,500人を対象に行った調査では、低気圧不調を経験した人は「3人に1人」とされました。
さらに、頭痛・だるさ・めまい・むくみなどの低気圧不調がある20~69歳の男女759人を調べると、54%が複数の症状を併発していました。
低気圧の日には、だるさや眠気だけでなく、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、むくみ、肩こり、関節の痛み、胃腸の不調など、さまざまな症状がみられることがあります。
そのため「だるい+吐き気」「頭痛+吐き気」「めまい+吐き気」のような組み合わせがあっても不思議ではありません。
特に吐き気を考えるときは、頭痛やめまいを一緒に確認することがポイントです。
吐き気そのものだけを見るのではなく、「頭も痛いのか」「ぐるぐる回る感じがあるのか」「立つとふらつくのか」とセットで整理すると、自分の不調の特徴が見えてきます。
私は、ここが「低気圧不調=頭痛」とだけ覚えてしまわないほうがよい理由だと考えています。
雨の日に頭痛がなくても、だるさや吐き気、めまいなどが繰り返される人はいるからです。
雨の日の吐き気は低気圧以外の原因も考えたほうがいい?
はい。雨の日に起きた吐き気だからといって、原因が低気圧とは限りません。
吐き気そのものは非常に幅広い体調不良で起こる症状です。
たとえば、胃腸の不調や感染症などでも吐き気は起こります。また、頭痛やめまいに伴って吐き気が出る場合もあるため、症状全体を見る必要があります。
ここで覚えておきたいのは、「雨の日に起きた」と「雨が原因で起きた」は同じではないということです。
たとえば毎回雨の前に似た症状が出て、天候が回復すると楽になるなら、気圧変化との関連を考える材料になります。
反対に、これまでの雨の日とは明らかに違う吐き気が突然起きた場合や、天候が回復しても症状が続く場合は、「いつもの低気圧不調」と決めつけないほうがよいでしょう。
これは不安になるための話ではありません。
原因を一つに決めつけないことで、必要なときに適切な相談につなげやすくするための考え方です。
雨の日のだるさや吐き気には何を試せばいい?

症状が軽く、普段経験している低気圧時の不調と似ている場合には、まず無理をしないことを優先しながら生活を整える方法があります。
全部を一度に試す必要はありません。
疲労改善研究所のセルフケアカフェでお茶をお出しするなら、「今日は一つだけ選んでみませんか?」とお話ししたいところです。
まずは、睡眠不足になっていないか、食事を抜いていないか、水分が不足していないかなど、いつもの生活を振り返ってみましょう。
体調に余裕があるなら、短時間の散歩や軽いストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす方法もあります。
入浴も選択肢の一つですが、吐き気やめまいが強い日は、無理に湯船に入る必要はありません。
セルフケアは「頑張ってこなすもの」ではなく、今の体を少し楽にするために選ぶものだと私は考えています。
耳の周囲をやさしく触ったり動かしたりするセルフケアが紹介されることもありますが、強く引っ張ったり、痛みを我慢して行ったりする必要はありません。
耳の痛みや聞こえの異常などがある場合は、セルフケアで済ませず相談を考えましょう。
低気圧不調に使われることがある漢方薬として、五苓散(ごれいさん)が挙げられることもあります。
吐き気、頭痛、めまい、むくみなどを伴う状態で用いられる場合がありますが、「雨の日の吐き気なら誰にでも五苓散が合う」という意味ではありません。
漢方薬も薬です。
現在使用している薬がある場合や、自分に合うか判断できない場合は、医師や薬剤師へ相談して選ぶほうが安心です。
小林製薬の2019年の調査では、低気圧不調への対処として「睡眠」や「市販の頭痛薬を飲む」といった方法が挙げられましたが、現在行っている対処方法について半数以上が満足していないという結果も示されています。
その場を乗り切るだけではなく、自分がどんな条件で不調になりやすいのか把握することも、次の対策を考えるヒントになります。
雨の日の吐き気で受診を考えたい症状は?

雨の日でも、症状が強い場合や普段と明らかに違う場合は「低気圧だから」と決めつけないことが重要です。
特に、突然の激しい頭痛、意識の異常、ろれつが回りにくい、体の片側を動かしにくい・しびれるなど、通常の低気圧不調とは異なる強い症状がある場合は、天候との関係を自己判断せず、速やかな医療相談が必要になることがあります。
また、吐くことを繰り返して水分を十分に取れない場合や、強いめまいで立ったり歩いたりすることが難しい場合なども、セルフケアだけで長く様子を見る状態とは考えないほうがよいでしょう。
一方、緊急性を感じるほどではなくても、次のような場合は一度医療機関へ相談することを考えてみてください。
- 雨や低気圧のたびに吐き気を繰り返す
- だるさや吐き気で仕事や家事など日常生活に支障が出る
- 症状がなかなか改善しない
- 頭痛やめまいなど別の症状も繰り返している
- これまで経験していた雨の日の不調とは様子が違う
「雨の日だから受診しなくても大丈夫」と考えるのではなく、天気よりも症状の強さ・続き方・普段との違いを見るのがポイントです。
なお、ここで挙げた症状だけで特定の病気を判断することはできません。
今回の資料だけでは、個々の病気について緊急性を細かく線引きするところまではできないため、判断に迷うほど症状が強い場合は専門家への相談を優先してください。
低気圧不調か判断するために何を記録すればいい?

雨の日の不調を整理するなら、「天気+症状」だけでなく、症状の組み合わせと時間経過まで記録するのがおすすめです。
これは診断を自分でするためではありません。
「雨が降ると具合が悪い気がする」という曖昧な感覚を、相談するときに説明しやすい情報へ変えるためです。
記録するときは、発症した日時、雨が降る前なのか降っている最中なのか、吐き気以外に頭痛やめまいがあるか、どのくらい続いたか、食事・睡眠・休息などで変化したか、といった項目を簡単に残してみましょう。
数週間程度続けてみると、「雨の前日に出やすい」「頭痛と吐き気がいつも一緒」「寝不足の日だけ悪化しやすい」など、自分では気づいていなかった傾向が見えてくる可能性があります。
ただし、記録によって天候との関連が見えてきたとしても、それだけで低気圧不調と診断できるわけではありません。
記録は答えではなく、自分の体調を説明するための材料です。
私は、この使い方がとても大切だと考えています。
天気予報を見るたびに「明日は具合が悪くなるかも」と身構えるのではなく、自分の体の取扱説明書を少しずつ作るような感覚で十分です。
雨の日のだるさと吐き気をどう考える?
個人的には、低気圧不調について最も気をつけたいのは、天候との関連が分かった時点で原因探しを終わらせないことだと考えています。
2019年の調査では低気圧不調を経験した人が3人に1人とされ、対象となった低気圧不調のある759人では54%が複数症状を経験していました。
雨の日に「だるいだけではなく、頭も重いし、少し気持ち悪い」という状態が重なること自体は、低気圧不調を考えるうえで不自然ではありません。
一方、吐き気は低気圧だけに特有の症状ではありません。
だからこそ、「雨の日に吐き気が出る」という一点だけではなく、いつ始まり、何と一緒に起こり、どのくらい続き、いつもの症状と同じなのかまで見る必要があります。
この視点を持っておくと、セルフケアで様子を見られそうな日と、医療機関への相談を考えたい日の区別もしやすくなります。
「低気圧が原因かどうかを当てる」ことより、「今日の自分はいつもの範囲なのか」を確認する。
そのほうが、毎日の体調管理には役立つのではないでしょうか。
まとめ
雨の日にだるくて吐き気がする場合、低気圧などの天候変化に伴い、内耳や自律神経が関係して不調が現れている可能性があります。
2019年の調査では低気圧不調を経験した人は3人に1人とされ、低気圧不調のある759人の54%では複数症状がみられました。だるさと吐き気に加えて、頭痛やめまいなどが重なる人もいます。
ただし、雨の日に起きた吐き気がすべて低気圧によるものとは限りません。
症状が軽い場合は、休息や睡眠、食事、水分、無理のない運動など、自分が取り入れやすいものから一つ試してみましょう。
一方、突然の激しい頭痛や意識の異常、ろれつの異常、片側のしびれ・動かしにくさ、繰り返す嘔吐で水分が取れない、立つことも難しいほどの強いめまいなどがある場合は、「雨のせい」と決めつけないことが大切です。
天気ではなく、症状の強さと普段との違いを見る。
これを雨の日の体調管理の基本にしてみてください。
よくある質問
雨の日にだるさと吐き気が同時に出ることはありますか?
あります。低気圧不調では一つだけでなく、だるさ、頭痛、めまい、吐き気、むくみなど複数の症状が重なる場合があります。
2019年の調査では、低気圧不調のある20~69歳の男女759人のうち54%が複数の症状を併発していました。
雨の日に吐き気があれば気象病と考えてよいですか?
雨の日に繰り返し症状が出ることは一つの手がかりになりますが、それだけで気象病とは判断できません。
吐き気はさまざまな体調不良で起こるため、頭痛やめまい、胃腸症状など一緒に起きている症状や、天候が回復した後も続くかなども確認しましょう。
雨の日の吐き気で病院を考えたほうがよいのはどんなときですか?
吐き気やだるさが繰り返して生活に支障を与える、長引く、普段の低気圧時とは明らかに違う場合は、医療機関への相談を考えてください。
突然の激しい頭痛や意識・言葉・手足の異常、繰り返す嘔吐で水分が取れない、立つのが難しいほどの強いめまいなどがある場合は、低気圧によるものと自己判断せず、速やかな医療相談を考えることが大切です。
参考
- 低気圧で体調不良になるのはなぜ?頭痛や吐き気の原因と対処法について
- 低気圧不調が起きる仕組み
- 佐藤純『気圧変化と痛み』教育総説 p.153-156 2015年8月
- 小林製薬調べ(2019年10月)
